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 『ラブ・ネバー・ダイズ』   2011・新しい発見を求めて劇場街を歩く  [ミュージカル]

「東北地方太平洋沖地震」の被害を受けた方々に、心からのお見舞いを申し上げますとともに、
被災地の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。


 2011・新しい発見を求めて劇場街を歩く

 何度、訪ねても飽きない街ロンドン。今、ロンドンでは、2012年7月のオリンピックに向けて、ホテルや地下鉄などのリニユーアル工事が始まっています。ヒスロー空港では、英国航空のターミナルも増設され見違えるほど綺麗になっています。これから街全体がオリンピックムードで盛り上がり、世界各国から多くの観光客が訪れることでしょう。

劇場街ウエスト・エンドは、年始にもかかわらず地元の人々や観光客で活気に溢れています。ミュージカルのお薦め作品は、『ウィキッド』『フラッシュダンス』『ラブ・ネバー・ダイズ』『リトル・ダンサー』『軍馬ジョーイ』『ジャージー・ボーイズ』など多くあります。また、現在上演されている作品でロングランしているものは、『オペラの怪人』『レ・ミゼラブル』『ブラッド・ブラザーズ』『シカゴ』『ライオン・キング』『マンマ・ミーア』『ウィ・ウィル・ロック・ユー』などが挙げられます。これらは、日本でも馴染み深いものばかりです。
 ミュージカル以外にも、1952年に始まり55年間のロングラン世界記録を更新し続けている、アガサ・クリスティの名作ミステリー『ねずみとり』が今も健在です。
1月3日~16日のロンドンシアターガイドでは、コメディーが7本、ドラマが13本、エンターテインメントが6本、ミュージカルが20本、他バレエが1本、オペラが1本上演されていました。


 『ラブ・ネバー・ダイズ』  Love Never Dies Adelphi Theatre

ポスター.JPG
                            ポスター

演出:ジャック・オブライエン
台本:アンドリュー・ロイド=ウェバー
   :フレデリック・フォーサイス
   :ベン・エルトン
作曲:アンドリュー・ロイド=ウェバー
作詞:グレン・スレイター
装置:ボブ・クロウリー
照明:ポーリ・コンスタブル
音響:ミック・ポッター
振付:ジェリー・ミッチェル

 ミュージカル『オペラ座の怪人』がロンドンで上演されてから25年が経過します。ガストン・ルルー原作の長編小説を基にアンドリュー・ロイド=ウェバーがミュージカル化し、今や彼の最高傑作といわれています。初演は1986年10月、ロンドンのハー・マジェスティーズ劇場。怪人役にマイケル・クロフォード、クリスティーヌ役にサラ・ブライトマン、演出ハロルド・プリンス。美しい音楽と豪華絢爛な舞台装置・衣裳・小道具・照明など全てにおいてミステリアスで劇的な作品で、世界25カ国以上で一世を風靡し、現在もロンドンや日本などで上演されています。
 2005年には、アンドリュー・ロイド=ウェバー自身がプロデュース・脚本を手掛け映画化されました。日本でも大ヒットしたので、ご覧になった方々も多いい事でしょう。
 さて、ロンドンのミュージカル界では数年前から、舞台版『オペラ座の怪人』の続編が上演されるのではと噂されていました。彼が長年にわたって温めてきた構想を練りあげた待望の新作『ラブ・ネバー・ダイズ』が、昨年3月9日ロンドン・アデルフィ劇場にて開幕しました。この数年、プロデュースに力を注いでいたので久し振りの作品になります。
 これは『オペラ座の怪人』の続編だすが、ガストン・ルルーの原作とは関係ないものです。小説『マンハッタンの怪人』フレデリック・フォーサイス著を基に創られていて、10年後の怪人とクリスティーヌの姿が描かれたものです。
 前作の舞台は、20世紀を目前に控えた19世紀末で終わっていますが、今回の時代設定は、10年後の1907年で、場所もヨーロッパからアメリカへと移っています。
舞台は、ニューヨークのコニーアイランド。全体構成は、1幕プロローグ+6場・2幕9場となっています。
パリのオペラ座を去った怪人は身を隠すようにアメリカに渡ります。マダム・ジェリーとその娘メグのふたりによって助けを受け、コニーアイランドで興行主として成功しています。
 クリスティーヌはラウルと結婚しましたが、ラウルがギャンブルにのめり込み借金を抱えてしまい苦労しています。クリスティーヌは借金返済のために働くことにします。雇い主が、怪人であることを知らずにラウルと10歳の息子ともども3人でコニーアイランドにやってきます。
 興行主の怪人は、一夜限りのコンサートを計画しクリスティーヌと再会します。二人の間には衝撃的な事が発覚し、怪人はグスタフが自分の子供であることを知ります。ラウルは、そのことを知って毎日酒場に入り浸りひとり去ってしまいます。
 メグは、怪人の財産が息子のグスタフに相続されてしまうと思い、グスタフを亡き者にしようと企てます。しかし終幕では、グスタフの身代わりにクリスティーヌがメグに撃たれて死んでしまいます。怪人とグスタフが一緒になるところで終幕となります。
ラブネバーダイズチラシ.jpg
                            チラシ
劇場入り口.JPG
                          劇場入口

場面構成
 第1幕
プロローグ
第1景 ファンタズマの外
第2景 天上の部屋
第3景 マンハッタンの第69埠頭
第4景 ホテル
第5景 舞台裏
第6景 天上の部屋

 第2幕
第1景 バー
第2景 海辺にて
第3景 ファンタズマの舞台
第4景 メグの楽屋
第5景 クリスティーヌの楽屋
第6景 ファンタズマの舞台裏 / 表舞台
第7景 クリスティーヌの楽屋
     コニーアイランドの通り
第8景 クリスティーヌの楽屋 / コニーアイランドの通り
第9景 埠頭

 客席に入ると紗幕にオペラ座の映像が映しだされています。1幕プロローグの曲が入ると紗幕に動いている観覧車、続いて当時の新聞が大きく映し出され、マダム・ジェリーとフレックの回想シーンとなります。そしてゆっくりとコニーアイランドのワルツに変化し第1景となります。全体的に各場面への繋がりが良く紗幕を上手く使っています。豪華な舞台装置もテクノロジーによってスムースな転換で流れて行きます。また、多くの場面で映像(コニーアイランド・観覧車・マンハタンの埠頭・客船など)が使用されていますが違和感なく舞台空間と共存し効果的に映し出されています。
 2004年に上演された『ウーマン・イン・ホワイト』(アンドリュー・ロイド=ウェバー作品)では、終始映像によって舞台構成されていました。場面を大事に表現していましたが、映像との融合に多くの課題が残ったように感じました。あまりにも映像が前面に出すぎ、照明効果が薄れてしまったようにも思えました。すべて映像による空間処理でこれがまた、早いスピードで変化(スクロール)するため、実に目まぐるしく感じました。視覚的効果をふんだんに使用したことで、作品に見られるスペクタクル感覚よりも、イリュージョン的試みと音楽性との相乗効果を意図としたのでしょう。当時は、コンピュータ制御による大型画像投影機システムPIGI-S700・4kw・HMIが使用されていて、スクロール制御によって静止画像を動かし複雑な演出効果を醸し出していましたが、演劇評論家の反応は賛否両論のようでした。
 今回の『ラブ・ネバー・ダイズ』では、そうした経験をもとに、作品の内容を壊すことなく映像が有効に使用されていました。
 この作品を観ていて照明が重要な要素になっていると感じました。1900年代初頭は、舞台の照明がガス灯から電気に変わった直後であること。電気を中心としたデザインであるが前面に出さずに時代性を良く捉えながら表現しています。派手な電飾でメリーゴーランドや観覧車を舞台装置として見せるのではなく、モノトーンのドロップ幕やモノクロ映像で歓楽地風景などを表現したことなどが効を奏したのでなないだろうか。立体的な空間をどのように見せるか装置・照明・映像の融合統一によって出来あがっています。特に天上の部屋(ファントム)の装置や小道具は壮大で、コニーアイランドでの興行で成功した怪人の富を象徴したものとなっています。
 音楽は、前作の『オペラ座の怪人』のようなインパクトはないものの、アンドリュー・ロイド=ウェバーのセンスの良さとメロディーラインで綴られていて、ロマンチックで抒情的かつ華美で感情に訴えかける楽曲に仕上がっています。クリスティーヌ役シーラ・ボッゲスとファントム役ラミン・カリムローの二人の歌唱力は抜群で、幻想的で美しい楽曲の数々を完璧なハーモニーで歌いこなしています。テンポの速い展開で、前作の要素を少し残しながら新しい作風に仕上がっていてアンドリュー・ロイド=ウェバーの魅力が凝縮された作品です。


パンフレット.jpg
                   パンフレット表紙

図書紹介
『オペラ座の怪人』ガストン・ルルー著
 翻訳本案内
三輪秀彦訳 東京創元社 1987年
日影丈吉訳 早川書房  1989年
長嶋良三訳 角川書店  2000年

関連本
『ファントム』スーザン・ケイ著 上・下
  北條元子訳 扶桑社 1991年
『マンハッタンの怪人』
フレデリック・フォーサイス著 
篠原慎訳 角川書店1999年

アンドリュー・ロイド=ウェバーの代表作
1968年 『ヨセフ&アメージング・テクニカラー・ドリームコート』             
1971年 『ジーザス・クライスト・スパースター』
1975年 『バイ・ジーブス』
1978年 『エビータ』
1981年 『キャッツ』
1982年 『ソング&ダンス』
1984年 『スターライト・エクスプレス』
1986年 『オペラ座の怪人』
1989年 『アスペクツ・オブ・ラブ』
1993年 『サンセット・ブルーバード』
1998年 『ホイッスル・ダウン・ザ・ウインド』
2000年 『ビューティフル・ゲーム』
2004年 『ウーマン・イン・ホワイト』
2010年 『ラブ・ネバー・ダイズ』

 付 記
 フレデリック・フォーサイス著『マンハッタンの怪人』篠原慎訳にこんなことが書かれています。『パリ・オペラ座では、照明のガス灯が900個あって、延べ1600mの銅管でガスを供給していた。それらは、しかし、1880年代に段階を追って電灯にとってかわっていった。中略、原作が出版されたのが1911年だから、それから30年を引き算すると、1881年に起きたことだということになる。中略、おそらく、1881年よりずっと後、1893年ごろではないだろうか。それらの手懸りのなかで最も有力なのは、観客席と舞台の照明が、ほんの数10秒間ではあったが、いっせいに消えてしまったことである。
 ルルーによると、「怪人」は、憑かれたように激しく愛していた歌姫にふられたことに怒って、彼女を強引に連れ去る。この拉致劇の効果を最大ならしめるために、彼女が、<ファウスト>(グノー作の5幕からなるオペラ)に出演して舞台中央で演技中というタイミングを「怪人」は選んだ(ミュージカル版を作曲したロイド=ウェバーは、<ファウスト>を、「怪人」が自ら作曲した<ドンファンの勝利>に置きかえている)。突然、照明が消えて、劇場内が漆黒の闇に閉ざされ、ふたたび明りがともったときには彼女の姿が消え失せていた。すかし、900個ものガス灯が一気に消えたり、ついたりすることはありえない。
たしかに、照明のことに通じている謎の人物がこの珍事を演出するために、無数のガス灯にガスを供給しているパイプラインの主弁を閉じたということはありうる。しかし、弁を閉じてもパイプのなかにはガスが残っているから、弁に近い灯から順次消えていくのが理屈で、しかも消える前に灯がまたたき、消えたりついたりをくりかえすはずである。しかも、当時はまだ自動再点火装置などという便利なものはなく、だれかが、灯芯を持っていちいちつけてまわらなければならない。点灯夫という職業が存在した理由もそこにこそあるのだ。スイッチをひとひねりして真の闇を現出し、一瞬にしてふたたび照明をいっせいに点灯するなどという離れ業は、電気照明システムの制御盤があって初めて可能なのだ。』と書かれています。舞台照明の歴史を垣間見る上で重要なことであると思いました。
アデルフィ劇場.JPG                    
                         アデルフィ劇場

http://www.loveneverdies.com/ 

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YUI

はじめてコメントさせていただきます。

ミュージカルファンなら絶対に訪れたい憧れの街ウエスト・エンド。大学生になったら夏休みに一人で行ってみよう!とずっと思っていました。 そうしたら、先生が希望者を一緒に連れて行ってくださるとのこと。面白い解説も聞けるのでは?と今から非常に楽しみにしています。

観たい作品が多くて悩んでしまうのですが、日本未公開の『レ・ミゼラブル』、大好きな『ブラッド・ブラザーズ』『ウーマン・イン・ホワイト』は是非とも観たいです!

これからもコツコツ記事を読んでいくので更新してくださいね!楽しみにしています。
by YUI (2011-04-26 23:19) 

千早正美の仕事部屋

コメントありがとうございます。是非、来年ツアーに参加して下さい。
by 千早正美の仕事部屋 (2011-05-01 01:46) 

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